Tuesday 29 May 2018

Any Points of View

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このスモックは着れば着る程に、洗濯すれば洗濯する程に風合いが増して自分の肌に馴染んでいく素晴らしい生地を体感してもらえる1着だと思います。デッドストックのデニムを早く自分の身体に馴染ませたくて、自分だけのヒゲを出したくて寝ても起きても同じデニムを履き続けていた経験がある人も服好きの方では少なくないのではないでしょうか。私はこの1着の生地に触れて美しいあたりや生地の変化を想像しながら、自分の若い頃の記憶を思い出しました。ヘンプ地はよく冷え、吸水性発散性共に素晴らしいため国内外では昔から衣食住様々なものの繊維として活躍していました。ヘンプ地にコットンのおよそ4倍の吸水力がある事、雑菌効果やマイナスイオン効果がある事、栽培中植物の成長過程では土中の有害物質を光合成により無毒化する作用がある事など実に様々な科学的証明もされているようです。これだけの科学的な証明もあれば、ヘンプが日本では昔から依り代と呼ばれていた事も腑に落ちる気がします。


ヘンプ地はそもそも糸自体が機械で『紡がれる』わけではなく、基本的に人の手によってな膨大な時間が掛けられて『績まれる』ものである事、技術者も少なく人件費の概念も全く変わってしまった現代では着尺が作られる事すら実現が困難なものである事を考慮するとこの1着がどれだけ貴重なものであるかは想像に難しくありません。しかし自分の感覚と頭で本当に感じたり考えたりしたいのはこの1着が『ただ貴重』なだけではなく『どう貴重』なものなのか。そして『この服が現代で自分にとって何になるのか』『何故自分はこの1着を買うのか』という事ではないでしょうか。過去の人間が植物や糸や生地や服を生み出すために掛けた知恵や手間を自分なりに調べてみたり、また彼等が注いだ時間や価値観を自分なりに想像しながら1着1着の価値を自分で決定していく事も古い服の楽しみ方の1つかもしれません。



1900-1910's French Military Hospital Hemp Work Smock : LILY1ST VINTAGE
Stockist : INSIDE MY GLASS DOORS >>> https://www.insidemyglassdoors.com
Photograph : Hiroyuki Nakanishi >>> http://nakanishihiroyuki.com