Monday 11 June 2018

The Continuation

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いくつもの世代の審美眼を越えてきた服への尊敬は尽きる事がありません。更にはこれからいくつもの世代の審美眼を越えていく大きな可能性を持つ服が在る事は、私はもうこれは奇跡でしかないんじゃないかと思うんです。特に大きな戦争を1つも2つも越えてきた服に対して強くそう思います。このリネンのダスターコートも長い長い時間を超えてきた偉大な1着。こういう服への尊敬の念は同時に服の作り手に対するものでもあり、また素材に対する尊敬でもあります。数十年、時には百年以上も昔に生まれたものが現代人にとても強い刺激と心地の良い時間を与えてくれて、日常の生活を豊かにしてくれる強靭な服たち。よくぞここまで耐えてくれた。生きててくれて有り難う。大好き。

私自身はシンプルで素朴な服を愛してきて10年以上が経ちますが、こういった強靭な服1着1着に対する感動は全く廃れる事がありません。シーズンによって気分がころころと変わって、去年の服よ、はいさようならという風に、全然なりません。私にとって向こう数十年にも耐えていくであろう服を少しずつ選んでいく行為は、自宅の家具を数十年かけて揃えて自分にとって理想の空間を作っていく行為に似ているかもしれません。自宅の器を数十年かけて揃えて自分にとっての理想の食卓を作っていく行為に似ているかもしれません。そんな感覚で、これからも人に寄り添うような素朴で美しいものを変わらずに選んでいきたいと思います。自由で多様な価値観が在って良い時代の中で、私は持続の美学という一種の古い価値観を見つめていきたいと思います。


1900-1910's French Linen Duster Coat with Ceramic Button : LILY1ST VINTAGE
※この服はアポイントの上、東京は渋谷のショールームでご覧頂く事ができます >>> CONTACT
Photograph : Hiroyuki Nakanishi >>> http://nakanishihiroyuki.com