Sunday 20 August 2017

Build One

| |






安価なもの、目新しいもの、変化の早いもの、明るいもの、軽いものが流行している時代と共に、ファッションという言葉の大きな意味に『一過性の』という枕詞がセットになってしまった事はもう多くの人が気がづいている事だと感じます。時代への対抗心として、あるいは純粋な個人的趣向として、高速で動く光のようなもの、掴んだと思ったら消える泡のようなものを追求する事に意味を見出せなくなっている人も増えてきているのではないでしょうか。私もその一人です。苔のように地味で目立たず、岩のように重く、何十年も変化がない、結果的に現代の流行とは真逆の性質のもの、過去に点在した美しいものに触れていきたいと思うのです。

美しいものを求める人間の本来的な性格に対して、過去に点在した美しい服は数こそ少ないものですが、これらは高速で動く類いのものではなく決して逃げません。こちらが服に対して腰を据えて、時間を掛けて納得のいくまで見抜いて、対話して、決して安価なものではありませんが耐久性に富んでいるため実生活の中で思う存分に長く楽しめるものです。一人の人間と長く付き合う事で一人への理解が深まっていくように、一着の服を長く所有すればする程に一着の服への理解も深まり、それはたくさんの服をシーズン毎に使い捨てるよりもはるかに自分の審美眼を磨いていくでしょう。服への審美眼は心の奥底で事物への審美眼にも繋がり、自分の精神的な基礎をも築いていく事だと思います。





1930's U.S Double Breasted Wool Chesterfield Coat : LILY1ST VINTAGE
Stockist : INSIDE MY GLASS DOORS >>> https://www.insidemyglassdoors.com
Photograph : Hiroyuki Nakanishi >>> http://nakanishihiroyuki.com